技術コラム

DAC・DDSの電流出力をシングルエンド電圧出力に変換する方法

作成者:mou-mou

今回は、ADI社製AD8130を使用して高速電流出力DAコンバータやDDSのアナログ電流出力をシングルエンドの電圧出力に変換する方法をご紹介いたします。
下図は、DDS(AD9834)用に設計した回路です。

回路の概要としては、20MHzをカットオフ風波数としたチェビシェフフィルタと差動/シングルエンドアンプAD8130から構成しています。

メリットとしては、
・直流信号の出力が出来る
・低周波の特性が維持できる
デメリットとしては、
・バイポーラ電源が必要になる
が挙げられます。

LTspiceでのシミュレーション結果と実測結果を交えて設計意図を説明していきます。
チェビシェフフィルタは、22MHz付近をカットオフ周波数として、遮断特性は、-50dB/Oct以上を得られるように設計しています。
オペアンプの差動入力部(DIFF+,DIFF-)のAC特性のシミュレーション結果です。

続いて、差動/シングルエンド変換回路のAD8130についてですが、基本回路はデータシートの【図2 代表的な接続例】の通りですが、R7,C9,C10を追加しています。
DDS(AD9834)から50Ω終端で1Vp-pの出力信号レベルを得るために、ゲインを2倍に設定しています。
ゲインが2倍ということで、R5とR6の抵抗は1:1の為、選択肢は多くあります。
抵抗値の変化と特性の関係を見ていきます。(この時点では、R7,C9,C10は未実装です)
まずは、1k, 4.7k, 10k, 22kとパラメータスイープしたシミュレーション結果です。


赤=1k,ピンク=4.7k,グレー=10k,緑=22k

抵抗が大きいとピーキングが大きくなるのがわかります。
では実際の回路で測定してみます。

シミュレーション結果より抵抗が小さいと想定していたより低い周波数で減衰が開始しています。
リップルが見えるが帯域が広いのは4.7kΩとなりました。
1kΩ~3.3kΩでは、1MHz位から減衰が見え始め、10MHzで0.4~06dB、程度の減衰となりました。

次にR7は、REFのバイアス電流をFB端子のバイアス電流に近づけることでオフセット電圧を抑制することを目的としています。
R5とR6の合成抵抗値(R5||R6)の抵抗を取り付けます。
R7を0Ωにした場合との比較結果です。

R7を0Ωにした場合、R5とR6の抵抗値が大きい程、オフセット電圧は増加します。
今回の回路では、G=2でR5=R6の為、R7はR5,R6の1/2の値とします。

C9とC10は、周波数特性を補償する為に実装します。ピーキングを抑える効果があります。
コンデンサの容量の変化と特性の関係を見ていきます。
R5,R6を22kΩに固定して、まずは、1p~22pまでパラメータスイープしたシミュレーション結果です。

では実際の回路で測定してみます。

シミュレーションと特性のズレはありますが、傾向としては一致しています。
コンデンサの容量が大きすぎると、低い周波数から減衰しています。
コンデンサの容量が小さすぎると、ピーキングを抑制できていません。

R1とR2 R5~R7とC9~10の組み合わせによって、最も平坦な特性を得られるところを探した結果、R1=R2=22kΩ, R3=11kΩ, C3,C4=1.5pF R5=R6=22kΩ, R7=11kΩ, C9=C10=1.5pFでした。(組み合わせは非常に多い為に、実験結果は省略いたします)

約10MHz位までほぼ平坦で、20MHzで-3dBという特性を得ることが出来ました。

今回の纏めとしては、
・ゲインを作るときの抵抗値は比率だけで決定しないで周波数特性を確認して決定する
・オペアンプの+端子と-端子のバイアス電流は同じにする
・周波数特性を補償する為にコンデンサを取り付けるパッドを用意しておく(異常発振の防止にもなります)
設計段階からこれらを注意しておくと、良好な特性を得ることが出来ます。

※2013年6月24 リファレンス番号に一部誤記がありましたので修正致しました。

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